みんな違って 金子つとむ
教育学者の大田堯(たかし)さんは
いのちの特性は
違う 変わる 関わる
ことだという
詩人の金子みすずさんは
私と小鳥と鈴とという詩を
鈴と、小鳥と、それから私、
みんな違って、みんないい。
と結んだ
僕の大好きな詩である
僕の飼っている
二匹の猫は
兄弟だが性格は大いに違う
おっとり型のゆずと
気が強いベリー
猫でさえそうなのだから
僕は人間も
みんな違って、みんないい
と思っている そして
それを認め合える社会がいい
しかし僕は
他人が僕とどれほど違っているか
実はよく分からない
他人から赤裸々な話を
聞かされたこともないし
僕も自分のことを話してこなかったからだ
みんなと仲良くして
いつもいい子でいるために
僕らは自分をどこかの穴倉に
閉じ込めてしまったらしい
アメリカ人の子供たちが
やあトム ところで
君の意見はどうなんだい?
としつこく聞かれるのとは
大違いだろう
そういわれ続けたら
だれだって自分の意見ぐらい
持てるようになるだろう
彼らがどんな大人になるか
想像するのは簡単だ
しかしこの国では
だれかに従うと決めるだけで
僕らは自分の意見を持たなくても
済んでしまうのだ
どんな政治でも
食べられるだけで充分というのなら
選挙に行く必要もないかもしれない
実際多くの人々は
政策よりも勝馬に乗ることばかり
考えているという
しかし
僕らが穴倉から抜け出して
みんな違って、みんないい。
と叫ぶだけで 僕らの社会は
変わっていけるのではないだろうか
ところで、君の意見はどう?
と互いに聞き返すだけで
僕らの話し合いの場が
ぐんとゆたかになるだろう
ほんとうの民意は
僕らひとりひとりの胸の内に
きっとあるはずだから―――
2023年4月12日