知る手前         金子つとむ

     

それを知る前と

それを知った後とで

世界の見え方がガラッと変わってしまう

自分がガラッと変わってしまう

それが知るということだと

養老孟司さんが

『バカの壁』の中で述べている

僕らは

知らないことは知らないままで

知っていることは知っているつもりで

生きている

知っていることも

大方は誰かの受け売りでしか

ないだろう

     

これだけは

自分がよく知っていることだと

自信をもっていえることが

はたしてどれほどあるだろうか

それこそが

養老さんのいう知ることである

僕らは未だその手前にいる

肝心なことは

ほとんど知らされない世の中で

僕らはとんと無知である

しかしそのことに気付くのは

実は容易ではない

創られた話を教科書もメディアも

吹聴するからである

     

『無知の知』

ソクラテスではないが

無知だと分かっているだけでも

マスコミのプロパガンダを

躱すことはできるだろう

世界には膨大な情報が溢れ

事実も嘘も入り乱れて混在している

一口に事実といっても

特定の立場からの

見方でしかないだろう

世界のメディアは

凡そ5つの系統に分類されるという

分からないことの正体は分かってしまえば

きっと単純なことに違いない

     

それはおそらく

人の欲望に深く根差している

例えば正義という言葉が

支配欲の仮面だと分かってしまえば

正義の戦争などないことが分かるだろう

テロとは

正義を掲げる側が

相手側につけた呼称にすぎないのだ

個人的に何の恨みもない国民どうしを

無理矢理戦わせるのが戦争なのだ

そのためにマスコミは

恐怖を煽り憎しみを駆り立て

血気さかんな若者たちに

武器を持たせるのだ―――

     

その裏で死の商人たちが蠢いている

戦争は絶対悪だと

僕らが毅然として立ち上がらなければ

敵・味方という古典的な枠組みに

取り込まれるだけだろう

全ての戦争は裏で暗躍するものたちの

ビジネスだったと歴史が教えている

あの日露戦争でさえ

戦費の4割は外債だったことを

君は知っているだろうか

現在のウクライナ戦争の戦費を米国が負担している

もしウクライナが返済できなければ

肥沃な大地を手放す契約があることを

君は知っているだろうか

     

                 2024.4.25