◆眼白−めじろ◆

 

眼白は留鳥で市街地でもよく見ることのできるポピュラ−な鳥の一つです。春潮の「野 鳥歳時記」では無季として扱っていますが、繁殖期の囀りの美しさから夏の季語にしてい る歳時記も多いようです。因に盤水編「月別季寄せ」では五月の部に入っています。以前 は籠鳥としてよく飼われ、眼白籠という副季語もあります。一つの枝に押し合いへしあい する様を眼白押し、眼の回りに刺繍を施しているように見えることから、繍眼児とも呼ば れています。また、囀りは「長兵衛忠兵衛長忠兵衛」などと聞きなされています。

◇見分け方◇

 

大きさは11.5センチで雀より小さく、その名の由来となった白い縁取りは、遠眼に もすぐそれと分かります。この縁取りがすっきりとした愛らしい印象を与えています。振 り返ってみると、眼白を見た記憶はいつも花の記憶と重なっているように思います。それ もそのはず、眼白は花の蜜が大好物なのです。冬、チィ−チィ−という甘い声が椿の中か ら聞こえてくれば、それは間違いなく眼白です。春、桜の花に数十羽の群れで押し寄せて 、賑やかに吸蜜するさまはいまでも脳裏に焼き付いています。秋には鵯や椋鳥の去った柿 の木に番でやってきて、やはらかい実を突いたりします。二羽がいつも仲良く寄り添って いて、つつましく幸せそうな印象を与えます。  

写真は柿の実を啄む様子を撮ったものですが、撮影中に眼白の舌がはっきりと見えて少 しびっくりしたものです。籠鳥でない限り小鳥の舌を見る機会は少ないのではないでしょ うか。特に眼白の舌の先は筆状になっていて、花の蜜などを吸いやすいよう進化したと考 えられています。また、このように花の蜜の好きな眼白は、昆虫たちと同じように受粉の 役目も担っています。  

食べ物はまた鳥の色彩にも影響を与えるようで、日本画家の上村淳之さんのエッセイに よると、人工飼料で飼育すると小鳥たちの鮮やかな羽の色が色あせてくるそうです。原因 は定かではありませんが、眼白の鶯餅のような色彩もあるいは蜜のおかげなのかも知れま せん。眼白がいるのだから眼黒はと思いきや、小笠原諸島だけに固有種がいるそうで、自 然はやっぱり不思議なのです。


◇例句◇

見えかくれ居て花こぼす目白かな     富安 風生

陶工の行き来の径や眼白籠        高木 良多

眼白籠恵那晴るる日は簷に吊る      水谷 晴光

よくひびく眼白の声や城ケ山       金子つとむ